sofyukiの日記

名前に意味はないのよ? 

地下鉄と鸚鵡と病院と基督教

 「平成七年三月二十日午前八時頃」、-僕が実家で喚き散らしていた頃より少し前ですね-地下鉄駅構内毒物使用多数殺人事件が起きました。

 

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現場となった霞ヶ関駅(日本語版Wikipediaより)

地下鉄サリンという名で知られるこの事件、坂本堤弁護士一家殺害事件と松本サリン事件を含めオウム三大事件と言われてますね。13名死亡6000超負傷のこの事件は日本のみならず世界をも揺るがすテロだったわけですが、詳細については割愛。

 

 

 今回注目したいのは、負傷者受け入れを行った病院。中でも、東京メトロ日比谷線、築地駅近くにそびえる大規模総合病院「聖路加国際病院」についてです。

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正直、そちら方面の人はかなり知ってる人多いんじゃないかなぁと思います。医学生にもかなり人気の研修先のようですし。

 元々、1902年にアメリカ人宣教医師ルドルフ.トイスラーが「築地病院」を買い取り聖路加病院を設立したのが始まり。その築地病院もイギリス人宣教師が設立したそう。そもそも中世ヨーロッパに於ける大学が医学部、神学部、法学部、哲学部を中心にキリスト教会の資本で設立されたものが多く*1、西洋医学にとってキリスト教は切っても切れない関係でもあるんですね。そのため、キリスト教の宣教は、西洋医学を通じて行われるものが多いのです。朝鮮や台湾などでは最初にやってきた宣教師は宣教医師だそうで、治療を通じて信任を得ていたそう。日本においてはクレッカー宣教師が有名ですかね。まあ、日本においては杉田玄白訳の解体新書などから西洋医学に理解ある日本人医師が少なからずいた事から、宣教医師そのものの知名度が低いそうですが。キリスト教と切り離された西洋医学によって日本の医療は薬と技術に頼った施術しか無いんやーとか言う論も有るそうですが、よくわかんないのと脱線してきたので割愛。

 

 当時院長だった日野原重明(現名誉院長)は、事件当日の病人受け入れを事件関係の救急搬送に一本化し、対応にあたります。事件があった年の三年前、新病棟が竣工しているのですがこの病棟、大規模災害に対応できるよう廊下等、あらゆるところに酸素供給口と電源設備が設けられており、緊急時の病床拡張が出来るようになっていたそうです。考案は日野原重明院長本人(当時常務理事)で、この設備は当時無駄と批判されていたらしいですが、実用性を示した事で他の大病院でも採用に至っているそう。もともと院長自身が、帝都空襲の際に何もできなかった後悔から提案したものらしいです。戦争やテロといった非日常的(敢えてこういう表現しますが)な事件が存在の因果を司っているという事実に少し神秘性を感じたり。

 

 さて、翻って近年

 埼玉県久喜市で1月、呼吸困難を訴え119番した男性(75)が25病院から計36回救急搬送の受け入れを断られていたことが5日、久喜地区消防組合消防本部への取材で分かった。男性は通報の2時間半後に搬送先が決まったが、到着した病院で間もなく死亡が確認された。

救急搬送36回断られる 埼玉の男性死亡 :日本経済新聞

 上は2013年の記事です。また、少し古いですが2011年の記事で

 消防庁は、高齢化に伴うお年寄りの搬送数の増加に病院側の態勢整備が追いつかないことが要因とみている。

3回以上拒否が1万6千件 重症患者の救急搬送 - 47NEWS(よんななニュース)

 少子高齢化に対する病院側の体制不備による受け入れ拒否(病院側のみの責任では無いとは思うが)というのも併せて、こういった事は一種のリスクマネジメント的な観点で考えさせられるお話ではあるなぁ、と。先ほどの病院の、いわゆるこんな事もあろうかと的な設備は一般的には無駄としがちですし、場所はあっても人が居ない(近年ではこちらのほうが深刻ですね)事態にもなりかねないので全部がこうあればとは言いませんが、うまい具合に解決できる方策は、その単純性に比例して長期的不利益にも結びつきやすいと個人的に思うので、難しいところではありますね。がんばれ病院。

*1:オックスフォード大学、ボローニャ大学パリ大学などが知られます