sofyukiの日記

名前に意味はないのよ? 

富士学校開校60周年記念行事富士駐屯地祭 パート4 戦車!(脱輪)

 さて、脱線だ!

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 戦時中、大きく硬く進化した戦車というカテゴリは常に対戦車砲や防御陣地の方が有利でした。

 

 西方電撃戦ロンメルが8.8cmFlaK18を持つ空軍野戦高射砲部隊に命じてマチルダⅡやルノーB1を撃破したのは、ロンメルの機転でも何でも無く対戦車用途の使用も考慮されていたからです。でなければアハト・アハトに対戦車用の徹甲弾など用意されている筈がありません。有名な重戦車、タイガーⅠの生産が開始された1942年8月には、正面からタイガーの重装甲を貫徹しうるオードナンス QF 17ポンド砲が量産されていました。1943年1月、北アフリカにタイガーが到着した直後、イギリス軍に17ポンド砲が出現したのはそのためです。

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(17ポンド砲)

 また、航空機からの攻撃に酷く脆弱で連合国の対戦車砲に対抗できる戦車を求めた結果、タイガーⅡ重戦車等の超重装甲低機動の泥沼に嵌まり、優秀な国力の尽くを浪費させてゆきます。元々、ドイツの電撃戦機甲師団の進撃速度により敵を混乱させ、前進する奇襲効果に頼った戦術でした。その対策が連合国でなされてくると、小規模火力の機動運用より大規模火力の方が求められるようになり、大きく重く前線に到達するのが困難な大口径砲の自走化が進みます。陸戦兵器が常に不足していた日本軍でさえ、75粍対戦車砲といえば自走砲でした。ドイツも第18砲兵師団を編成しますが、遅すぎました。

 戦後に軽戦車、中戦車、重戦車という区分が取り払われ、MBTという戦車が登場し、走攻守纏まった平均的な性能に落ち着きます。これは、他の支援兵器の戦場到達速度が向上し、優秀な敵の大型砲を味方の砲兵で相手が出来るようになったため、ある程度の耐弾性を持たせつつ戦線突破を阻害する敵戦車を排除する火砲を搭載した為です。

 戦車を中核とした機械化部隊による攻撃は、冷戦期の陸戦の花型であると言えます。戦車は戦場の主役と言えますが、主役一人では劇は成立しないのです。

 

 

 余談ですが、史上最大最強の機甲師団を投入した戦いは何か。

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 間違いなく湾岸戦争でしょう。1991年2月24日に於いて開始された砂漠の剣作戦は、アメリカが対ソビエト用に編成していた欧州陸軍「第七軍団」が投入されました。総人員数14万6千、5万の車輌に1500輌の戦車をもって進撃します。この兵員数、陸上自衛隊の人数とほぼ変わりません。この他、海兵隊やアラブ多国籍軍、イギリス第1機甲師団にフランス第6軽機甲師団とアメリカ第18空挺軍団が投入されており、機甲師団の速度を活かした「左フック」と言われる戦法を採っています。これは、クウェートに進軍していた精鋭部隊である共和国防衛隊を殲滅するのが目的でした。物資の補給部隊も併せて進撃していた第七軍団はまさに、地方都市丸ごと移動して進撃していたと言っても過言ではありません。

結果的に、第七軍司令のフランクスの無理解によりイラク共和国防衛隊の大半を取り逃がすという大失態をやらかしますが。

 

ーと、脱線してきたので(今更)戻します。終わんないので(笑)

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  戦後第1世代国産MBT61式戦車。技術者の離散や技術の断絶などを乗り越えて国産化した戦車ですね。主砲は日本製鋼所がアメリカの90mm砲を元に52口径へと長砲身化させたもの。T字のマズルブレーキが特徴的です。マズルブレーキは、砲口から放出される爆風を前方のみではなく左右に分散させることで、反動を低減する仕組みです。

 エンジンはパワーパック化されておらず、変速機が前方にある配置で、三菱の570馬力ディーゼルエンジンを搭載します。ただ、変速機が前方の戦闘室にある関係上、車内の気温はかなり高かったとか。仮想敵がT-34/85等であったため、同世代のT-55と比べて良いところが殆ど無いという出来になってしまいました。560輌生産され、2000年まで現役でした。

 そういえば、開発に「日本戦車の父」原乙未生が関わっていますね。

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 彼は元帝国陸軍中将で、1927年に完成した初の国産戦車である試製1号戦車の開発に携わった人です。61式と74式が空冷ディーゼルエンジン搭載なのも彼の影響でしょう。

 帝国軍の戦車がディーゼルなのは燃費を考慮して。空冷なのは海外運用前提で、冷却水の調達の問題や満州北部での寒冷地に対応するためでした。61式の時点では帝国軍の整備ノウハウが生かせたかもしれませんが、パワーパック化されて整備手順の異なった74式で空冷にしたのは間違っていたという意見も在ります。それ以降の90式や10式は液冷なので、空冷での冷却能力や高性能化に問題があったんでしょうね。本土使用が前提の自衛隊戦車は、前述の問題点なんて関係ないですし。

 

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 74式戦車。写真は改良型です。国産第2世代MBTで、防御より攻撃力機動力に重点を置いた設計となっています。対戦車砲の軽量化などにより、防御力は機動性で代替可能という思考から、装甲が削減されてます。主砲はロイヤル・オードナンス社製L7A1 105ミリライフル砲をライセンス生産したもので、日本製鋼所が製作しています。74式の特徴として油気圧サスペンションを装備し、左右前後にその場で車体を傾けることが出来、山岳地帯での稜線射撃を容易にしています。ただ、初期は信頼性に劣り、油漏れで一夜にして戦車の大部分が行動不能になった事もあるそうな。

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 エンジンは三菱のディーゼルエンジンを搭載しており、馬力は720馬力。パワーパック化されています。パワーパックとは、変速機とエンジンを一体化したもので、故障した際などに丸ごと交換することが出来るようになっており、エンジントラブルによる車両の機能停止を比較的容易に解決できます。しかし、70年台末に世界初の第3世代MBTであるレオパルド2が登場した事により世代遅れとなってしまいます。873輌生産され、現在でも200輌程現役だとか。

 余談ですが、イギリスは他の国とは違った歩み方をしており、装甲の防御力を重視していました。チーフテンでは120mmライフル砲に重装甲を施した戦車で、機動性は悪いながらも第3世代の特徴の一部を先取りしていた戦車と言えます。

 

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 90式戦車。本州に於いては教育、実験部隊にしか配備されておらず、極めて珍しい戦車です。戦後国産第3世代戦車にして、世界水準を上回る事ができた初の戦車ですね。要素研究は1977年より始まり、1983年以降6輌の試作車が作られ開発が進められました。第3世代戦車は、120mm以上の主砲による高い攻撃力、複合装甲の採用による高い防御力、大出力エンジンによる高い機動力とそれ以前の戦車を全て陳腐化させてしまうものでした。中でも複合装甲により、自らの主砲に耐えうる防御性能を持つようになります。90式では、試作車を搭載砲で実際に射撃するという徹底した試験が行われ、数発の被弾の後にも走行したという実績があります。戦車は初めて、戦場で出会う如何なる火砲にも耐えうる防御性能を手に入れたのでした。

 

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(画像はおそらく韓国K2のもの)

 複合装甲とは均質圧延装甲とセラミックス装甲や中空装甲などを文字通り複合させた装甲板で、化学エネルギー弾や運動エネルギー弾に対して別々の装甲で防御します。内部の構成物質は軍事機密であり、具体的な耐弾性能も憶測の域を出ません。ただ、欠点として非常に重くなる点があり、複合装甲が施されているのは砲塔正面と車体正面のみで、側面に同クラスの砲弾を食らったら持ちません。しかし、一部とはいえ砲弾に耐えうる事は特筆すべき事であります。

 

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 因みに、類似した装甲にチョバムアーマーが存在しますが、これは対戦車ミサイルの弾頭によく使われるHEATに対抗するのを重点に開発され、セラミックス装甲とほぼ同じであり、厳密には複合装甲ではありません。

 

 主砲はラインメタル社の120mm滑腔砲を日本製鋼所ライセンス生産したものを搭載しています。滑腔砲とは、砲内にライフリングが施されていない砲の事で、装弾筒付翼安定徹甲弾と呼ばれる砲弾を打ち出すのに向いた構造の為採用されています。

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 上は対戦車りゅう弾。HEAT-MPとも呼ばれ、成形炸薬弾榴弾の両方の効果を持つ弾種です。

 下が装弾筒付翼安定徹甲弾APFSDSとも呼ばれ、先端と同口径の矢のような弾体が砲弾に埋め込まれ、装弾筒と呼ばれる部分で射撃の爆風を受け加速し、発射後に風圧を受け、分離され弾体が飛翔します。

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 装弾筒分離の瞬間。これによって非常に高初速を得ることが出来、貫徹力は戦艦大和の最も厚い部分を貫徹し得る攻撃力を持ちます。初速は1.5キロ/秒以上とか。それだけの高速で突入する飛翔体は、傾斜装甲による弾を逸らす効果が発揮できす、傾斜装甲そのものが廃れる一因となります。

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(画像はルクレールのもの)

 また、ジャイロセンサーによる砲身の安定化、高度な弾道コンピュータや射撃指揮装置を搭載するため、初弾命中率は95%オーバーとか。従来であれば不可能だった走行間の射撃も可能になり、電子装備の優劣が戦車の性能を左右する程重要な要素となりました。また、90式戦車では自動装填装置が搭載され装填手が減り、乗員は3名となっています。

 話は逸れますが、前述の湾岸戦争に於いてM1エイブラムスとT-72のキルレシオは1:400。ソ連の輸出型はモンキーモデルと言われる劣化版なので考慮する必要はあるのですが、圧倒的な勝利の背景にはM1のセンサー類がT-72に比べ圧倒的に優秀だった為、射程や制度に勝るM1の長所が活かせた点や、装甲防御力がT-72の攻撃力を上回っていた点などが挙げられます。これによりソ連輸出戦車の信頼は失墜。第二次大戦より続くソビエト戦車最強神話は終焉を迎えます。

 話を戻しましょう。

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 エンジンは三菱のパワーパック化されたディーゼルエンジンを搭載しており、馬力は1500馬力。1500馬力級ディーゼルエンジンのパワーパックを開発出来たのはドイツと日本のみで、ガスタービンや両方のハイブリットを選択する国もあります。

 総じて高いレベルで纏まった国産戦車であり、341輌が生産され、北海道に集中的に配備されています。実は、本来74式を置き換える予定だったのですが冷戦終結に伴う世界的軍縮で生産数が減少、一番脅威だった北海道に集中的に配備された経緯があります。

 

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 現在、新規開発された中では最新鋭の戦車、10式です。第3世代戦車の性能を引き上げつつ、軽量化するという目的で開発されました。

 90式が50.2tなのに対して10式は44t。装甲のモジュール化が成されており、主要装甲を外した状態で40tとかなりの軽量化に成功しています。モジュール化によって、将来新型装甲の開発が行われても付け替えるだけで性能を向上させることが出来、被弾により破損しても破損部位のみを取り替えるという柔軟な運用が可能となります。

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(モジュール装甲を外した状態の試作車。上の画像と比較して砲塔側面に大きな違いが)

 防御性能は新型の複合装甲を搭載した結果、90式と同等又はそれ以上とされており、軽量化による路面への負担減等で戦略機動性が向上しているそう。諸外国の戦車が軒並み重量増化する中、軽量化する日本は対照的ですね。レオパルド2A7では67t、M1A2SEPでは63tと非常に重くなってます。M1シリーズの最新型、A3では50tクラスまで軽量化される予定であり、将来的な戦車の趨勢を占う重要な点であるかもしれません。

 主砲は、日本製鋼所の国産砲を搭載しています。90式開発の際も実は国産砲とラインメタルの砲の2案あり、結局コスト等の面からラインメタルを選んでいます。10式の主砲の国産化をもって主要コンポーネント全てが完全国産となりました。一部装備では海外製が使われていますがね。海外では55口径の120mmを搭載して攻撃力を高めたのに対して、10式では弾薬の改良により威力向上を行っています。また、55口径も換装出来るようにデザインしているとのこと。

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(ラインメタル滑腔砲。一番下は試作の140mm砲)

 しかし、55口径は砲身が長すぎて扱いづらく、レオパルド2のA6PSOでは44口径に戻しており、今後どちらが主流になるのかはわかりません。試作で140mm砲も存在するようですが、砲弾の手動装填が現実的でなく、自動装填を前提としなければならない事や、反動の増大により車両の重量を増やさなければならない点、そもそもそれほどの大口径砲を現状使う必要が無い等の理由から採用される様子はありません。

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 エンジンは毎度おなじみ三菱のディーゼルですが、1200馬力となっています。しかし、油圧機械式無段階自動変速操向機と呼ばれる無段変速トランスミッションが採用されています。連続可変トランスミッション(CVT)では、トロイダル式等、何れにせよ履帯駆動による負荷の大きさ、エンジンの大質量大馬力に対応できておらず、油圧式の無段変速機(HST)に遊星歯車減速機を加えた油圧機械式トランスミッション(HMT)が採用され、質量に対して起動輪のスプロケット出力が他の現用戦車に比べて格段に向上していると技本が言っていました。

 ただ、戦車に搭載するのが世界初というだけで、ジェネラル・ダイナミクス・ランドシステムズ社のHMPT-500HPエンジンがこの機構を採用しています。M2ブラッドレー歩兵戦闘車などが搭載してますね。専門的な事はよく判らんので受け売りですが。

 また、現代戦において重要なネットワーク中心の戦いに対応するため、C4Iシステムの搭載を前提として開発されています。

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 Command Control Communication Computers  Intelligenceの略で、部隊がそれぞれ情報を共有し戦闘するシステムで、歩兵やヘリコプター、無人機が見つけた敵を全ての友軍に視覚的に示し、同時に多数の敵を効果的に対処出来るものです。10式戦車では、他の戦車の情報を元に射撃を行ったり、各車両に個別目標の攻撃指示を行い、攻撃の集中を防ぐ等のシステムが搭載されている模様。

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10式車内(試作型)

 タッチパネルで、目標指示、射撃が行えるんだとか。

 

 現在66輌が調達されていますが、「平成26年度以降に係る防衛計画の大綱」により戦車の保有数が300輌となったため、90式を完全に代替するのかは不明です。

 

 続く…(;´Д`)